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最高裁判所第三小法廷 昭和29年(オ)902号 判決 1957年12月24日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人丸岡奥松の上告理由第一点について。

所論は民法五四五条違反ないし審理不尽、理由不備を主張するけれども、原審における上告人の請求は、要するに、上告人が本件売買契約につき民法五四一条による解除をしたことを主張し、被上告人等に対し、右解除に基く民法五四五条の原状回復義務の履行を求めるものであつたところ、原審は右解除の主張を認容しなかつたのであるから、これに基く上告人の請求が排斥されたのは当然である。尤も、原審が、右売買契約について合意解除のなされた事実を認定したことは所論のとおりであるけれども、本件のように、契約の一部履行があつた後、合意解約がなされた場合には、民法七〇三条以下による不当利得返還義務の発生するのは格別、当然には民法五四五条所定の原状回復義務が発生するものではない。しかも原審において上告人は前記合意解除の事実を否認しており右合意解除に基く不当利得の返還を請求しなかつたこと記録上明白であるから、原判決が所論前渡代金につき不当利得の返還を命じなかつたのは当然である。原判決には所論の違法なく論旨は理由がない。

同第二点について。

原判示の証拠によれば、原判示のように昭和二三年六月二五日本件売買契約が当事者の合意により解除されたとの事実認定は首肯することができる。所論は原審が適法にした証拠の取捨、事実認定の非難に帰し上告適法の理由とならない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島 保 裁判官 小林俊三)

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